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北野・山本地区に現存する異人館の中で、れんがの外壁の建物としては唯一のもので、色鮮やかなれんがの色調、石積みの玄関ポーチ、2階部分のハーフ・ティンバー(木骨構造)など、他の異人館と異なった重厚な雰囲気をもっています。
また尖塔の上に立つ風見鶏はよく知られ、今では北野町の象徴として欠かせない存在になっています。
この館はかつて神戸に住んでいたドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマス氏(G.Thomas)が自邸として建てた建物です。
北野・山本地区に現存する異人館の中で、れんがの外壁の建物としては唯一のもので、色鮮やかなれんがの色調、石積みの玄関ポーチ、2階部分のハーフ・ティンバー(木骨構造)など、他の異人館と異なった重厚な雰囲気をもっています。
また尖塔の上に立つ風見鶏はよく知られ、今では北野町の象徴として欠かせない存在になっています。
風見鶏はその名の通り、風向きを知る役目をもっていますが、雄鳥は警戒心が強いことから魔除けの意味や、またキリスト教の教勢を発展させる効果があるといわれてきました。
旧トーマス住宅は、1階に玄関ホール・応接間・居間・食堂・書斎があり、2階には夫婦の寝室・子供部屋・客用寝室・朝食の間などがあります。
室内の意匠は、部屋によって変えておりますが全体にドイツ伝統様式を取り入れながら、19世紀末から20世紀初頭にかけて新しい芸術運動(アール・ヌーヴォー)の動きを感じさせるものがあります。
1階各入口扉に付いている把手金具に、アール・ヌーヴォー風の装飾がつき、玄関ポーチの柱頭飾り、応接間のシャンデリア、書斎腰板の風刺画などにその傾向が伺えます。
また食堂は中世城館風の天井小梁、飾り戸棚、暖炉飾りなど見ごたえのある意匠を見せています。
建物の設計に当たったのは、ドイツ人建築家 ゲオルグ・デ・ラランデ(G.de.Lalande)で、明治30年代後半から大正初期にかけて日本で活躍した建築家です。
建築主 | ゴットフリート・トーマス |
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構造規模 | 木造2階建、外堀れんが張、半地階、塔屋付、寄棟造、ストレート葦
1階230.12㎡ / 2階230.60㎡ 計891.03㎡(含 地階・屋根430.29㎡裏部屋) 敷地 607.30㎡ |
建築年代 | 明治42年頃 |
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所有者 | 神戸市 |
国指定重要文化財 指定年月 | 昭和53年1月21日 |
ポーチ
古典様式による御影石づくりの柱の上部にはガマの穂をモチーフにしたデザインがあります。ガマの穂には、再生と多産という意味があり縁起の良い植物と言われ、ヨーロッパでは伝統的に使われているモチーフの一つです。
玄関
特徴あるデザインの玄関扉のデザインは、神戸市内のベンチのデザインにも採用されています。1階各部屋のドアのノブは、お客様をおもてなしするために、当時流行したアールヌーヴォーを取り入れたデザインになっています。
書斎
どの角度から光が入るように五面のベイウィンドウになっています。スキップフロアには、アールヌーボー調の風刺画が描いており、天井とペンダントライトは、こうもり傘を広げたデザインになっているなど、遊び心を取り入れた部屋となっています。
ホール
今も昔もお客様を出迎える場所です。1階各部屋の天井のデザインは全て異なり、ヨーロッパの流行を取り入れたものや、日本の伝統的なデザインを取り入れたものなどもあり、ホールの天井は、日本の格子天井を意識して作られたと言われています。
応接間
トーマス夫人のサロンとして使用されていました。豪華な三段カーテンは、光の調節にもうまく利用されていたようです。暖炉は、居間と背中合わせになっていて、煙突が1つですむように工夫されています。
居間
18畳とスキップフロア6畳を合わせて24畳あります。天井は幾何学模様になっています。ピンク色のシャンデリアは、天井近くの3つの滑車で上げ下げし、本を読んだりトランプを楽しんだりできるよう、明かりの調節をしたと言われています。
ベランダ
1Fベランダは、建物内にもかかわらず、室外をイメージするよう、外壁の続きとしてレンガの壁になっています。当時は多くの植物を置いていました。夏の短いドイツの人たちには、植物を置くことが日常的だったのです。
食堂
ドイツの宮廷や城によく見られる城館風の造りです。壁の木製飾りにより、ドアを塔に見立てており、低い部分が城壁を、食器棚の上はバルコニーをそれぞれ表しています。また、シャンデリアの上部は王冠のデザインになっています。暖炉の横のステンドグラスのデザインは、当時流行であったアールヌーヴォーを取り入れています。
ホール
2階は、ここから他の部屋へ行くことが出来ます。1910年頃の2Fホールの写真には、ビリヤード台が写っており、照明もビリヤード専用の照明があります。
朝食の間
宿泊されたお客様とトーマス氏の家族が、一緒に朝食を召し上がった部屋として伝えられています。日当たりが良く、暖かいうえに、当時は大阪まで眺められるなど景色も良かったことから、冬は家族の居間としても使われていたようです。
客用寝室
2階はトーマス氏の家族のプライベートルームとして使用されていたため、1階に比べ簡素な造りになっていますが、お客様がお泊りになられたこの部屋は壁紙とカーテンがコーディネートされているなど、アール・ヌーヴォーに影響をあたえたアーツアンドクラフツ運動がみられ、おもてなしの心配りが取り入れられています。
子供部屋
トーマス氏の一人娘のエルゼさんのお部屋です。南向きの日当たりの良い部屋で24畳の広さがあります。当時は洋服ダンス、整理ダンス、テーブルとイス、洗面台、勉強机、縫製台、それに人形コーナーがあったそうです。
寝室
トーマス夫妻の寝室で20畳ほどの広さがあります。寝室の奥の部屋はトーマス夫人のウォークインクローゼットで、西側の窓ガラスの両サイド(現在は空調を設置)は、トーマス氏の洋服ダンスとなっていました。
ベランダ
ドイツは体操競技発祥の地でもあり、ドイツ人は健康意識も高く、ベランダには吊り輪を取り付け運動していたようです。天井に、吊り輪の取り付け金具が残っているので探してみてください。
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災によって、風見鶏の館は全壊とはいかないまでも、外部煉瓦のひび割れや煙突が根元から折れるといった被害を受けました。
破損度:中。被害状況:煉瓦の煙突は2本が折れ、内1本が地面に落下。
外壁の煉瓦154個所に亀裂確認。
復旧に際しては、今後同程度の地震にも耐えられるだけの耐震性を確保するため、煉瓦をステンレス線によってネットに結束させるなどの技術が取り入れられました。
修理、外壁レンガの修理 36,000枚以上
(28,800枚利用、新たに22,000枚)